カワモズク絶滅の危機 愛知県芸大の水辺開発



写真1 カワモズク
カワモズクは淡水産紅藻類の一種で、水温が15℃~20℃の清冽
な清流に生育する。きれいな湧水が流れる小川にだけ自生する。
2011年10月から開発が予定されている愛知県立芸術大学施設建設
予定地には、2011年7月1日時点でも水温が20℃の湧水に群生し
ている。源流域から下流100m余の水域に幅広く自生している。
愛知県内でも有数の自生地を保全するため、愛知県立芸術大学
及び県学事課・県環境課に対して、カワモズクの生育分布地を回
避していただくよう懇願し、代替地の再検討を含めて2011年7月
1日、要請を行った。

カワモズク

写真2 カワニナ
 カワニナはゲンジボタルの幼虫時代の餌として知られているが、
同じ水域に千個体以上が自生している。きれいな川に生息する。

カワニナ

写真3 アサヒナカワトンボのヤゴ
 このカワトンボの成虫は、4月頃から羽化し6月頃まで出現す
る。清流で渓畔林が生育する自然河岸の里川や、丘陵地帯の源流
域に分布する。現地では、発生のピーク時に百個体が、小川沿い
を飛び交っていた。

ヤゴ

写真4 芸大を上空からの写真
 赤丸地点が愛知県立芸術大学施設=新音楽学部棟建設予定地。
koukuu

写真5 新音楽学部棟の建物
急傾斜地である高低差15m の砂防堰堤もある場所に新音楽学部
棟の建設が予定されている。この建物の地表にはスズカカンアオ
イが群生している。広大な芸大敷地のどこに何を配置すべきか、
事前に自然調査を実施した上で、マスタープランを策定する計画
性があれば、本件のような後手の対処法は回避可能であった。

ongakutou

写真6 ダムと濁水とトンネル
建物は小川に面して雨水調整池=コンクリートダムが2か所建
設され、濁水は小川に放水管でそのまま流入する計画となってい
る。コンクリートのアルカリ排水は、小川でけなげに生きている
カワモズク・カワムツA型・カワトンボ・カワニナなどカワと名
が付く代表的な清流生物を絶滅の危機に追いやる。
急傾斜地への建設は環境負荷が高く、建設時の土砂の流入や、
建設後の濁水流入など問題点が多い。自然環境の荒廃が進む平坦
な土地は芸大内には数か所点在し、それらを含めた代替地を検討
すべきである。
また、建設予定地の端には、明治16年に長鶴池への通水を目的
として掘削された全長90m の治助トンネルが残されている可能性
もあるため、学生や教職員の尊い生命を守るために、埋め戻しが
適切になされているか確認して頂くよう、2011年7月1日に要請
した。

joukei

写真7 小川の風景
 この水域には環境省では絶滅危惧種Ⅰ類に指定しているカワモ
ズクが生育し、愛知県でも絶滅危惧種に指定しているハネビロエ
ゾトンボなどが、生息している。半世紀かけて復元した里山の里
川、湧水が豊かな水辺生態系を保全することは、愛知県の財産で

ある自然環境を未来に引き継ぐことでもある。英断を求めたい。

joukei