愛知県有地・愛知県立芸大の谷戸
  と水辺を自然環境保全地区に!


写真 スジシマドジョウ小型種東海型 国:絶滅危惧ⅠB類、

                  県:準絶滅危惧


 スジシマドジョウは地域によって形態が異なる。小型種東海型は庄内川水系の中小河川を主に分布する。香流川流域は生息に適した湧水や小川がある。絶滅危惧種となった要因は、圃場整備や河川改修、水質悪化や湧水の枯渇などである。

写真 カワヨシノボリ 底生魚・淡水に生息するヨシノボリ

写真 香流川の総合学習


 庄内川支流の矢田川支流の香流川。流路延長約18km。名古屋市内では地域住民が最も親しんでいる川である。当会は川沿いの小学校4校で10年前から総合学習の講師として『川に遊び川に学ぶ』活動を応援している。まず『川ガキ』を育てる事。子どもたちは川でオイカワ・タモロコ・ナマズ・モクズガニ・テナガエビなど2030種類の水生生物を毎年採集観察して水辺生態系を学んでいる。それが、流域の水環境や水循環を学ぶきっかけとなっている。当会では、香流川に関する発刊物も多い。

写真 さて、その香流川の水源はどこ?


 水源の一つはモリコロパーク。もう一つは愛知県立芸術大学の森だ。香流川の最大支流の堀越川を辿ると東部丘陵線を越えて芸大敷地内の谷戸の森に入っていく。そこはフモトミズナラやハンノキ、ヤマザクラやコバノミツバツツジなど様々な樹木が生育する。冬には明るい落葉樹の森だからこそ林床にはスズカカンアオイが花を咲かせている。

写真 森からの湧水が育む豊かな生態系


 長久手町内の県有地で生物多様性と多様な動植物の種の遺伝的多様性が保たれている区域は、芸大の谷戸だけとなった。森から湧く水や細流はやがて清流の小川となり、幾多の命を育む。


写真 カワモズク3種が生育する小川


 その小川にはカワモズク、アオカワモズク、チャイロカワモズクという絶滅危惧種の藻類が数百メートルの流れに分布している。猿投山からの湧水が随所で湧く長久手町内には、13年前~7年前に発見した他の種類のカワモズクも分布し、まさに『湧水とカワモズク』の町ともいえる。なかでも堀越川のカワモズク群生地は貴重だ。





写真 ホトケドジョウ 国:絶滅危惧ⅠB類
県:絶滅危惧Ⅱ類


 愛知県東部丘陵地帯の湧水を源とする小川に生息する。圃場整備や里山開発が絶滅危惧種となった主要因だ。生息地と生息環境そのものの保全が最優先されるべき種である。








写真 ヌマムツ=カワムツA型(稀産種)


 庄内川流域にはカワムツB型が多産するが、堀越川にはA型が主に生息している。これは、そのヌシともいえる体長23cmの大物。生態の詳細は『未来に残そう豊かな自然・愛知県立芸術大学敷地内の保全すべき動植物、音楽学部棟建設区域の第一次自然環境調査報告書』名古屋市水辺研究会発行、2011年5月発刊を参照されたい。





写真 トンボのヤゴ 堀越川の清流・小川に生息する


 春にはアサヒナカワトンボが、初夏にはサナエトンボが、夏にはオニヤンマが、秋にはハネビロエゾトンボ(絶滅危惧Ⅱ類)が羽化し森を飛び交い、再び水辺に産卵に戻ってくる。2011年6月の調査時には1時間に百尾を越えるカワトンボが確認された。ヤゴはコオニヤンマ・コシボソヤンマ・キイロサナエなど。この他、水生昆虫もカワゲラ・カゲロウ・トビケラが多産する。堀越川の清流はカワムツ・ホトケドジョウ・カワモズク・水生昆虫など様々な生命を育み、この川固有の水辺生態系を形成している。





写真 魚類 ギンブナ・モツゴ・ドジョウ・カワヨシノボリなど






写真 ドブガイ(準絶滅危惧)マシジミ(絶滅危惧Ⅱ類)


 堀越川流域には今では珍しくなった貝類が生息している。やはり圃場整備や河川改修による砂泥底の消失など河床材料の変化や水環境の悪化などが絶滅の危機を招いている。





写真 ウシモツゴ 国・県:絶滅危惧ⅠA類


 乱獲防止のため生息箇所は非公開。10年以上、ほぼ同じ水域に生息している。圃場整備や溜池改修などで絶滅の危機に瀕している。河川に流出した個体は流れが緩やかな水域に避難しているが、生息は危ぶまれる。素人による採集は難しい。





写真 メダカ 国:絶滅危惧Ⅱ類 県:準絶滅危惧


 全国では農薬多用や圃場整備で激減したが、長久手町では湧水が豊かで生き残った地域グループが各所に生息する。






写真 小川 童謡に出てくるような自然の小川は少なくなった


 水温が夏場でも20度を越えない湧水が流れる堀越川の源流域。この清流にカワモズクが生育する。11月下旬には数株だったチャイロカワモズクが12月下旬には数百株に増えた。





写真 堀越川の中流域・水田


 河川改修された堀越川。落差工手前で左右に分水されU字溝や道路下へ暗渠化され、すぐ下流側の水田に引かれている。この地域は史実に基づけば開墾以来、水不足に長年苦労した地域だとされる。芸大の新音楽学部棟の巨大建造物建設工事が2312月~25年3月まで施工されることで、工事中の濁水を防止し、水源涵養林の伐採で水量不足につながる開発行為に警鐘を鳴らす要望書を201112月、地権者は長久手町に出したという。また、それに先立ち長久手町議会の20人の議員の内13人もの良識ある議員が署名し、工事についての住民説明会の実施や自然環境保全の要望書を出しているという。さらに大村愛知県知事および県自然環境課長・学事振興課長宛の質問状や要望書も、これまでに多数提出されているという。

 川の水は生物にも人間にも、まさに命の水なのである。昔から水を治める者が国を治めるといわれてきた。2011年9月の台風でも堀越川源流域は農業用水路を含めて出水で荒れた箇所がある。砂防指定地でもあり、流域一貫の治水対策を考えれば、環境負荷の高い急傾斜地に新音楽学部棟を建設するのではなく、グラウンドや当初芸大が予定地とした平坦で安全な場所に建設するべきである。老朽化した建物にかわる音楽棟の建設そのものには反対しない。芸大の敷地内で最も自然環境が優れた場所であり、危険な場所への建設に異議を唱えているのだが。

 芸術はどこから生まれるのだろう。教育者はいかにあるべきなのだろう。県民の税金はどのように使途されるべきか。芸術を目指す若者の感性は、本当は、幾多のかけがえのない命の犠牲の上に胡座をかくことを許したくないのではないか。

 良識ある決断を幾度となく求めたが、建設地の見直しには一度も言及されず、スズカカンアオイ五百株とヒメボタル数千匹の土壌は剥ぎ取られ、オオウラジロノキの広大な斜面樹林は皆伐される予定だ。1月には惨い光景が出現する。負の遺産ではないのか。










写真 マメナシの花(上)実の樹形(中)実(下)


 絶滅危惧ⅠA類。長久手町では堀越川流域にだけ3株(内1株は枯死寸前)生育している。長久手町には保存樹指定の制度がある。また、天然記念物へと2012年1月4日の市政移行に伴い指定してはどうでしょう。日本全国で愛知県・三重県の一部にしか分布しない氷河期の生き残りの樹木だ。近年では、瀬戸市、尾張旭市、小牧市などでも天然記念物に指定された。県西部の尾張東部丘陵地帯の各市はすでに指定済みである。そして、堀越川の谷戸を自然環境保全区域に指定し、未来を生きる子どもたちに故郷の風景を残そう。








 
 
 
 
 
 
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